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出張中の読書

情報革命バブルの崩壊 (文春新書)

情報革命バブルの崩壊 (文春新書)

「無料文化」を支える過剰期待というバブル…というまえがきに始まり、第1章/本当に新聞はネットに読者を奪われたのか?第2章/ネット空間はいつから貧民の巣窟に成り下がってしまったのか?第3章/情報革命バブルとマネーゲームの甘い関係。第4章/ソフトバンクモバイルで考える時価総額経営の終焉。第5章「ネットの中立性」とネット「ネット無料文化」の見直し。タイトルが先鋭にして興味深い。


個人投資家にして人気ブロガーである著者ならではの、新聞などの既存メディアと現在のネット文化分析は、面白かった。


金余りでインフラに資金を集められたIT業界だったが、そうもいかなくなった昨今、いよいよ利用者課金が始まり、ネット無料文化は終わるという予測。

何より、驚いたことが自転車操業の「ソフトバンクの崖っぷち経営」。
頼みのアップルとの提携i-Phoneが起爆剤にならず、いよいよキャッシュフローが厳しくなったということ。

最終章では膨大な量を捌かねばならなくなったネットインフラは、誰のものかを問い、その公共性、中立性を訴える。既存メディアがNTTやKDDIなどのまともな(ネット)業界企業と提携すべきだと説く。分かりやすい展開である。


情報革命の本質は、情報そのものが増えたわけではなく、情報アクセス方法の効率化だと断じ、本当の価値を持った情報とは何かをあらためて考えさせてくれる。そういう意味で情報価値を失っていない新聞がこうした環境情勢を真剣に受け止め、再生を図るべきと激励しているようにも思えた。


愚の骨頂はYahoo!などに、ただ同然で価値ある情報を提供する新聞社だと批判する。メーカー(さらに新聞社は総合家電メーカーに喩えるのも面白い)が利益かつかつで製品を作っているのに、その製品を大量に捌いている量販店が大儲けしている図式とそう大差ないと、この関係を説いてみせる。

100年以上の歴史を持った新聞社は、なかなか変身できないのである。