今週の読書
- 作者: 渡辺利夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/05
- メディア: 新書
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明治以降の日本の外交、軍事の歴史を振り返り、これからの対アジア外交への警鐘を鳴らす。
富国強兵、殖産興業…日清、日露の戦いに勝ち、世界の一等国に並んだ日本の歴史を、冷徹な見方で振り返る。そして、隣国とどう対処していくべきかをやはり冷徹に語る。外交は善隣友好にあらず、国益の確保であると。同盟を破棄され孤立無援で半島、大陸という泥沼の海に沈んでいったかつての失敗を分析する。
この本のクライマックスは第10章「海洋国家同盟か大陸国家連携か―日本の選択」であろう。宮沢内閣の時の私的懇談会のゲストスピーカー・梅棹忠夫氏の言葉―「日本が大陸と付き合ってろくなことはない、というのが私の今日の話の結論です。」を紹介している。梅棹氏は、ユーラシア大陸の民族、地政学の歴史をもとにしている(中央アジア的暴力―残虐なる民族の興亡は大陸の至る所で起きざるを得なかったと。その凶暴なる彼らに巻き込まれるなと)。
朝鮮半島、中国大陸…あの時もそうだったが、これからもまともに付き合っていける相手ではない。経済連携という機能的連携なら別だが、(東アジア)共同体などは幻想であると。かつての失敗を胸に深く刻み、海洋国家同盟としてアメリカ、台湾、東南アジア、インドさらにオーストラリア、ニュージーランドと連携を深めユーラシア大陸をけん制しながら自らの生存と繁栄を図るという生き方が賢明な選択であると著者は結論づける。
偏狭なるナショナリズムが再度、台頭しているユーラシア大陸。
地球規模で我々の位置を再確認させてくれると同時に、偏狭なるナショナリズムの行方にも注目をしなければなるまい。